初恋された話-ラスト-
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前回の話の続きを書きたい。
既に非常に後悔しているのはなんで続編にしてしまったのかということである。
本当は続編にするほどのものでもないが、前回はオチを書くに気にならなかったのである。
前回は田中が斬新なアイデアで席替えを成功したところで終わった。
私ももちろん席を替えたのであるが、隣になったのはひとみちゃんであった。
ひとみちゃんは女子でもそこまで目立つ存在ではなかったが、目が細く浅黒かった。
そして小6にしては豊かな胸囲を誇っており、走るときに胸が揺れるのがチャームポイントだ。
しかし、今ならまじまじと見るであろうその胸囲は、当時第二次性徴が遅かった私にとって、なにか奇妙なものとしか映らなかった。
彼女は目が悪く遠いところを見るときには目を細める事が多かった。それは睨んでいるようにも見えることで、終わりの会でよく批判の対象となった。私も目つきの悪い女だと思っていた。
終わりの会で糾弾をよく受けていた彼女を慰めることも多く、それに従い彼女とは話すことが多くなっていった。
そんな日々を過ごしているうちに、彼女の態度に異変を感じ取るようになった。
彼女がよく教科書の忘れ物をしてくるようになったのだ。
隣とはいえ普段席を離しているが、隣人が忘れ物をした時は、席をくっつけなければならない。当然体の距離も近づく。
席をくっつけると彼女は授業中、小声で話しかけてくることが多くなった。
私は内心苛ついていた。授業は真面目に受けたかったからだ。貧乏であったから学校の授業料というものに敏感になっており、学校は休まず授業は真面目に受けると心に誓っていた。ちなみに中学高校と6年間で1日しか休んでいないのはひそかな自慢である。
席をくっつけてコソコソ話をしていると先生からも怒られることが増えてきた。
私は自分から話していないのに怒られることに情けなさを感じていたが、彼女は少し嬉しそうであった。
そして、ついにその日が来た。彼女が私に好意を打ち明けたのだ。打ち明けたと言っても直接告白されたわけではない。
いつものように彼女が教科書を忘れ、席をくっつけてみると彼女の机の端っこに何かが書かれていた。
そこには「まーじゃんたろう♡」と鉛筆で濃いめであった。
これには参った。
彼女はおそらく直接言うのが恥ずかしかったのだろう。
そして席をくっつけたときに私の目に入るようにわざわざ机の端っこ、つまり私の席側に濃いめでかいたのであろう。
しかも、好きとは書かれていない。あくまで♡なのだ。これなら人に言いふらされても致命傷が回避できるといったもんだ。
私は凹んだ。
私はひとみちゃんの好意を受け取ることができない。ひとみちゃんとは別の好きな人がいたからだ。
そして、これが他の男子に見られた際に、どうすればいいかわからない。
もしかしたら付き合っているなどと噂を流される危険性もある。
様々な感情に支配されながら、休み時間を迎えひとみちゃんは席を立った。
その瞬間私は高速で消しゴミをつかい、「まーじゃんたろう♡」を消した。
バレないようにいつもなら下に落とす消しカスも自分で回収した。
次の日からひとみちゃんは教科書を忘れてくることはなかった。
私は自分がなんてひどいことをしたのかと思ったが、もうこれで机をくっつけなくてもいいと思うとホッとしていた。
あの日、休み時間を終え、席についたひとみちゃんの瞳に浮かんでいたのは涙ではなかったであろうか。
そう思うことがたまーに。5年に一回くらいある。
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