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初恋された話

公開日: : 雑談

私が小学生のころ、初恋をされた話をしてみたいと思う。
初恋をされたとは自分が惚れられた、それが相手の初恋であったという意味である。別にうぬぼれていたわけではなく、本当にそうだと思う。

小学校6年生のとき、クラスで席替えがあった。席替えと言うのはもうそれはめちゃくちゃ興奮するイベントであり、小学6年生ともなると好きな女の子とどうにか近くならないのかとどきどき祈っていた。男子はいつもより声を大きくはしゃぎ、女子は大人びいて興味なく取り繕ってはいるものの一定の興奮を覚えていた。

いつもの席替えはくじ引きで席を決めるのであるが、このときは違った。
クラスのある人物が席替えのやり方を変えたいと提案してきたのである。その人間はいつもあまり話をしない寡黙な男・田中であった。田中の提案にみんな虚をつかれた様子であった。田中の寡黙さだけではなく、6年間席替えをしてきて、「くじ引き」「好きなところに座る」「名前の順」に慣れきってた私たちにとって、席替えの新たなる可能性に懐疑的であったこともその理由であったと思う。

だが彼の提案は斬新なものであった。彼のアイデアを説明している姿はいつもの寡黙な彼ではなく、少し興奮した小学6年生の姿であった。
今まで積極的に発信してこなかった彼としては、小学校最後の学年に来た今、なにかしら小学校に爪あとを残しておきたいという思いがあったのかもしれない。

私は悔しかった。田中がかっこよかったのだ。小6にとって、かっこよさはすべてである。小6のかっこよさとは足が速いことと、大人っぽいことを話すことにある。そのときの彼は大人っぽいことを話していたのである。たかが席替えである。しかし、その席替えがどのようにすばらしいかというのを説明しているだけで既に大人なのである。内容はどうでもいい。

心配性の私はさらに怖くなった。彼の提案が可決されれば、彼は英雄になる。席替えが終わっても彼の提案のおかげと言うことでしばらく、もしかしたら卒業まで語り継がれることになる。それだけではなく、ことあるイベントごとに彼の意見が尊重されるようになるであろう。小学生は同意したい生き物である。少しでもいい意見があると同意したいのである。私もそっち側の人間であると、無意識に媚ついているのである。
私の感情をよそに田中のアイデアは全会一致で賛成となった。
彼に持っていかれた・・・それが私の席替え改革に対しての率直な感想であった。

彼の席替えのアイデアは今まで私たちが経験したことの無いものであった。
まず男子だけが教室に残り、女子は教室から退場する。
男子は予め決められた男子に配分された席を自由に選択することができる。もちろん後ろの席や窓際など人気のある席はバッティングしやすい。バッティングすれば、じゃんけんや話し合いで座る席を決める。言い忘れていたが、男子同士が隣になることはできない。かならず男女のペアで座る決まりである。
男子が席を決めている間、女子は教室の中をのぞいてはいけない。
男子が自分の座る席を決めた後、男子は教室から退場する。次に女子が同じように女子に配分された席を自由に選択する。
女子が席を決めた後、女子は教室から出ずに決めた席に座っておく。そして、男子が教室に入り、自分の選択した席に座るのだ。
もちろんその席の隣には新しく隣に座ることになる女子が座っているため、そのときに初めて自分の席の隣に誰が座るかがわかるのである。
「え~おまえかよ~」
「マジいやだ~」などキャッキャッとした声が教室を満たし、非常に盛り上がった。
田中の席替えは大成功を収めた。

成人してから席替えといえば合コンくらいでである。
合コンの席替えは同姓同士のなんともいえない駆け引きやどこに移っても一緒といったぬるい空気が漂うが、
小学校のそれは違う。喜びたいけど喜べない、泣きそうだけど泣けないそういった甘酸っぱいレモネードのような空気が漂うのである。

私はまだ初恋はされていない。

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